上映した映画



第77回カンヌ国際映画祭 ゴールデン・アイ賞 ノミネート作品(2024年)


アルノー・デプレシャン監督が映画ファンに贈る
映画と映画館への愛に溢れたシネマ・エッセイ


フランスの名匠アルノー・デプレシャンが自身の映画人生を投影しながら、映画の魅力を観客の視点から語り尽くした自伝的シネマエッセイ。
本編には、映画史に功績を残した50本以上の名作が登場。リュミエール兄弟による映画の発明からアベル・ガンスの『ナポレオン』(27)、フランク・キャプラ『或る夜の出来事』(34)、アルフレッド・ヒッチコック『北北西に進路を取れ』(59)、黒澤明『乱』(85)、クロード・ランズマン『SHOAHショア』(85)、ジェームズ・キャメロン『ターミネーター2』(91)、『ノッティングヒルの恋人』(99)など、世界中の様々なジャンルの映画が洪水のようにスクリーンを駆け巡る。そのほか、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、イングマール・ベルイマンらの映画も登場。デプレシャン監督が尊敬するアメリカの哲学者スタンリー・カヴェルやフランスの批評家アンドレ・バザンの言葉も借りながら、“映画とは何か”に迫る。

2024年製作/88分/フランス
原題または英題:Spectateurs!
配給:アンプラグド


あらすじ



19世紀末に誕生してから現在に至るまでの映画の魅力と魔法を語り尽くす、アルノー・デプレシャン監督が映画ファンに贈る、映画への深い愛と映画館への賛美に満ち溢れたシネマ・エッセイ。デプレシャン監督の過去作『そして僕は恋をする』(96)や『あの頃エッフェル塔の下で』(15)でマチュー・アマルリックが演じる主人公ポール・デュダリスに、監督自身を投影し、初めて映画館を訪れた幼少期、映画部で上映会を企画した学生時代、評論家から映画監督への転身を決意した成人期を、映画史と共に描いた自伝的映画となっている。




解説


映画の魔法にかかった私たちの人生を50本以上の世界中の名作と共に辿る


19世紀末に誕生してから現在に至るまでの映画の魅力と魔法を語り尽くす、映画への深い愛と映画館への賛美に満ち溢れたシネマ・エッセイ。デプレシャン監督は、『キングス&クイーン』(04)や『クリスマス・ストーリー』(08)などで、数々の映画賞にノミネートされ、日本の映画ファンからも人気高い名匠。本作も、第77回カンヌ国際映画祭で特別上映され、最優秀ドキュメンタリー賞にあたるゴールデン・アイ賞にノミネートされた。映画ファンから絶賛の声が上がった話題作。デプレシャン監督の過去作『そして僕は恋をする』(96)や『あの頃エッフェル塔の下で』(15)でマチュー・アマルリックが演じる主人公ポール・デュダリスに、監督自身を投影した自伝的映画になっている。初めて映画館を訪れた幼少期、映画部で上映会を企画した学生時代、評論家から映画監督への転身を決意した成人期を、映画史と共に描く。マチュー・アマルリックは本人役として出演。祖母役をジャン・ユスターシュ監督の傑作『ママと娼婦』(73)で知られるフランソワーズ・ルブランが、14歳のポール役を『落下の解剖学』(23)の視覚障害のある息子役で注目を浴びたミロ・マシャド・グラネールが演じている。


デプレシャン監督が贈る映画と映画館へのラブレター


ドラマとドキュメンタリーを融合したハイブリッドな構成で綴られる本作。フィクションのシーンには、一般の観客が映画体験エピソードを語るインタビューシーンが挟まれる。「本作の主題は“私たち”映画の観客」と監督が語るように、観客の視点で映画愛が描かれる。シネ・ヌーヴォ(大阪)やアンスティチュ・フランセ(東京)など、日本の映画館の登場も見逃せない。映画は私たちの人生にどれほどの影響をもたらすのか。

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第76回 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品(2023年)


早熟の異才モレッティ監督 5 0 年のキャリアの集大成?


23歳でデビューの後、若くしてその才能を認められ40歳を迎える頃にはカンヌ、ヴェネチア、ベルリンの3大映画祭を制覇し、モレッティアーノと言われる熱狂的なファンを持つモレッティ監督。マチュー・アマルリックは10代の頃からモレッティの映画の世界に魅了されていたと語り、彼の映画から生まれたいくつかの名言は作品を知らないZ世代のミームにさえなっている。スクリーンの前で自分の人生を演じ同時代人の圧倒的な支持を得てきた彼は常に前向きな現代社会の観察者だった。知的で辛辣だが楽観的な未来を夢見ている。老境に差しかかった映画監督が激しい時代の変化に適応する難しさを面白おかしく描いたコメディが本作だ。監督はこの映画が彼のキャリアの第一段階の集大成の作品だという。

2023年製作/96分/G/イタリア・フランス合作
原題または英題:Il sol dell'avvenire
配給:チャイルド・フィルム


あらすじ



完璧のようにみえていた映画監督ジョヴァンニの人生。順調なキャリア、傍にはプロデューサーの妻、溢れんばかりの新作のアイディア。でも、そう思っていたのはジョヴァンニだけだった!チネチッタ撮影所で新作の撮影が始まると、畳みかけるようにジョヴァンニを災難が襲う。女優は大嫌いなミュールを履いてきた上に演出に口を出し、プロデューサーは詐欺師だったと判明、妻には突然別れを告げられる!映画は完成するのか?家族の愛をとり戻せるのか?変化の激しい時代に、ちょっと取り残されて、戸惑うジョヴァンニが見つけた人生で本当に大切なこととは?




解説


映画についての映画


モレッティには『ナンニ・モレッティのエイプリル』『母よ、』など映画の中で映画を撮る作品が何本もある。監督は多くの場合が彼の分身で、時代ごとにモレッティが感じる社会への違和感を表現してきた。本作で主人公ジョヴァンニが撮影しているのは1950年代を舞台にした政治がテーマ(と本人は思っている)映画。さらに脚本家たちとアメリカの作家ジョン・チーバーの短編小説「泳ぐ人」の脚本を執筆中。頭の中では映画館で出会った若いカップルの音楽が中心のラブストーリーが進行中だ。モレッティの大好きなフェリーニの『甘い生活』(本編にも登場する)と『8 2/1』。モレッティの偉大な支援者タヴィアーニ兄弟、キェシロフスキからスコセッシまで映画の力を信じるモレッティの監督たちと映画への敬意と愛に溢れた作品だ。


数々の名作が生まれた場所チネチッタ撮影所


撮影が行われたのは90年余の歴史を持つヨーロッパ最大の撮影スタジオで、フェデリコ・フェリーニ『アマルコルド』『青春群像』、ウィリアム・ワイラー『ベン・ハー』、ルキノ・ヴィスコンティの『ベリッシマ』、ピエル・パオロ・パゾリーニ『ソドムの市』、マーティン・スコセッシ『ギャング・オブ・ニューヨーク』やフランシス・フォード・コッポラ『ゴッドファーザー』、最近ではルカ・グァダニーノ『Queer』など数々の映画の撮影が行われた。夢の工場とも呼ばれ約3,000本の映画がこのスタジオで撮影され、そのうち90本がアカデミー賞にノミネートされ、51本が受賞している。日本映画の『テルマエ・ロマエ』などの撮影も行われた。

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繋がりにつながれて、真夜中


今年デビュー20周年を迎える七里圭監督。劇場初作品の『のんきな姉さん』(04)で注目され、カルト的な人気を誇る『眠り姫』(07)や『DUBHOUSE』(12)、「音から作る映画」プロジェクト(14〜18)、『背 吉増剛造×空間現代』(22)など、常に先鋭的な作品を生み出してきた異才である。唯一無二のフィルモグラフィーを重ねる七里監督にとって、最新作『ピアニストを待ちながら』は久々の劇映画となる。

ピアニストを待ちながら
2024年製作/61分/日本
配給:合同会社インディペンデントフィルム

のんきな姉さん デジタルリマスター版
2004年製作(デジタルリマスター 2022年)/87分/日本
配給:charm point


『ピアニストを待ちながら』・『のんきな姉さん』 上映スケジュール



七里圭監督来館! 1月18日(土)19日(日)



『ピアニストを待ちながら』・『のんきな姉さん』の監督、七里圭(しちりけい)さんに舞台挨拶をしていただけることが決定しました。
以下が舞台挨拶のスケジュールです。


18日(土)
3回目(16:30ー)上映後、4回目(19:30ー)上映後

19日(日)
1回目(10:30ー)上映後


主催:シネマポスト、一般社団法人コミュニティシネマセンター
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(次代の文化を創造する新進芸術家育成事業))
独立行政法人日本芸術文化振興会




経歴


1967 年生まれ。早稲田大学卒業。シネマ研究会に所属し、先輩の手伝いから映画製作の現場で働くようになる。約 10年間の助監督経験、テレビドラマ等の演出を経て、山本直樹原作『のんきな姉さん』、短編『夢で逢えたら』 (ともに2004)で監督デビュー。しかし、『マリッジリング』(2007)以外は自主製作に転じて、異色の作品を発表。声と気配で物語をつづる『眠り姫』(2007/サラウンド リマスター版 2016)が、15 年間毎年アンコール上映を繰り返し、代表作となる。一方で、建築家・鈴木了二と共作した『DUBHOUSE』(2012)が第42回ロッテルダム国際映画祭他ヨーロッパ・北米のエクスペリメンタルな映画祭を席巻し国際的な評価を得る。この頃から、他ジャンルのアーティストとのコラボレーション作品も多くなり、「音から作る映画」プロジェクト(2014~2018)、「シネマの再創造」(2019~)など実験的な映画制作、映像パフォーマンスも手掛けるようになる。2020年にはロックダウン直前のベルリンとパリでの招聘公演が好評を博す。コロナ禍を経て、村上春樹ライブラリー・イメージ映像「The Strange Library」(2021)、記録映画『背 吉増剛造 × 空間現代』(2022)を公開。昨年は、「石巻ハ、ハジメテノ、紙ノ声、……」(京都芸術劇場春秋座)、「Music as film」Realtime voice-over and remix(東京ゲーテ・インスティチュート)、「清掃する女:亡霊」(早稲田小劇場どらま館)と三つの上演映像作品を演出。
2017年、山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション審査員。2003 年から 2016 年まで TBS「THE 世界遺産」の構成作家も務めた。2019 年より多摩美術大学非常勤講師。最初の作品は、高校時代に PFF‘85 に入選した(推薦:大島渚)8 ㎜映画『時をかける症状』(1984)。


作品


●長編劇場公開映画/監督
2004 年 のんきな姉さん
2006 年 ホッテントットエプロン―スケッチ
2007 年 眠り姫(2016 年サラウンドリマスター版)
2007 年 マリッジリング
2016 年 サロメの娘 アナザサイド( in progress ) ※
2017 年 アナザサイド サロメの娘 remix ※
2018 年 あなたはわたしじゃない(サロメの娘 ディコンストラクション)※
2022 年 背 吉増剛造× 空間現代
2023年 清掃する女:亡霊

●短・中編映画/監督
2004 年 夢で逢えたら
2008 年 once more
2010 年 Aspen
2012 年 DUBHOUSE
2014 年 To the light 1.0、2.0
2014 年 映画としての音楽 ※
2015 年 ドキュメント・音から作る映画 ※
2016 年 Music as film ※
2018 年 入院患者たち
2019 年 Necktie
2021 年 La Boussole
2021 年 村上春樹ライブラリー・イメージ映像「The Strange Library」
2022 年 The cleaning lady after 100 years : Spectre
2024年 ある渡り鳥を探して
(※は「音から作る映画」プロジェクト作品)

●長編劇場公開映画/脚本
2004 年 犬と歩けば チロリとタムラ (監督:篠崎誠)
2005 年 L'amant ラマン (監督:廣木隆一)

●テレビドラマ/オリジナルビデオ
1998 年 七瀬ふたたび(第9話・第10話)
1998 年 独房 X(新任女刑務官 檻の中の花芯)


ピアニストを待ちながら



目覚めるとそこは真夜中の図書館だった。瞬介(井之脇海)が倒れていた階段の両側には、吹き抜けの天井まで高く伸びた本棚がそびえ、あちこちの段に小さなヒトガタが潜んでいる。扉という扉を開けて外に出てみるが、なぜか館内に戻ってしまう。途方に暮れた瞬介は、導かれるようにして一台のグランドピアノを見つけ、そっと鍵盤を鳴らす。
やがて瞬介は、旧友の行人(大友一生)とその彼女だった貴織(木竜麻生)に再会する。三人は大学時代の演劇仲間だった。行人と貴織はもう随分前からここにいるらしい。他にも、見知らぬ中年男の出目(斉藤陽一郎)や謎の女絵美(澁谷麻美)もいる。行人は、この状況を逆手にとって、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは、行人が作・演するはずだった「ピアニストを待ちながら」。しかし、瞬介には気になることがあった。確か、行人は死んだはずでは……?




解説


世界的建築家・隈研吾が手掛けた村上春樹ライブラリーで全編撮影!
出られない図書館を舞台に描く
目に見えないものに紐付けられた若者たちの物語


このおかしな物語は、私たちが経験したコロナ禍や、今や当たり前になったオンライン、SNSでの非対面コミュニケーションの奇妙さを暗示している。20世紀の不条理は、すでにリアル。私たちは、いつも不在の相手につながれて、待たされて、くたびれている。サミュエル・ベケットの有名戯曲を思わせる題名に、その意図が込められている。
映画の舞台となるのは、世界的な建築家の隈研吾が手掛けた、村上春樹ライブラリー。村上文学をイメージした迷宮的空間で全編撮影されたことも、見どころの一つだ。 本作は、この村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)の開館記念映画として製作された短編をもとに、約1時間の劇場公開(ディレクターズカット)版として完成された作品である。

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のんきな姉さん デジタルリマスター版



姉との禁じられた愛の記憶を小説に書き、雪山で自殺しようとする弟と、聖なる夜にオフィスで残業する姉。その二人の現在に、記憶=小説がフラッシュ・バックされていく。雪山と都会、現在と過去という二つの時間が溶け合う瞬間、弟のささやく声は物語の全てを宙づりにする・・・。




解説


七里圭監督初の劇場用長篇作


七里圭監督の長編映画デビュー作。敬愛する山本直樹の同名漫画を原作にし、その漫画の霊感源、唐十郎『安寿子の靴』、森鴎外『山椒大夫』までも射程に収めた。夢のような物語を綴る淡い光とゆらめく影は、名手たむらまさきの撮影。35mmフィルムならではの温もりある質感を、渾身のレストア作業で可能な限り再現したデジタルリマスター版を上映いたします。











なにか、夢を見ているような。いいの?このままで?何もしないで…?
彼は何度も私たちを驚かせ、喜ばせ、学ばせてくれた。


代表作の『霧の中のハリネズミ』(1975)や『話の話』(1979)で知られ、日本でも多くの人々に愛され続けているロシアのアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテイン。切り絵アニメーションの手法で作られるアニメーションは、その深い精神性と心理的リアリズムによりアニメーション史上屈指の傑作として、今もなお人々の心に深く刻まれている。今回の新しい作品集はお馴染みの6作品に加え、日本劇場初公開の『おやすみなさいこどもたち』、『ロシアの砂糖TVコマーシャル』の2作品が追加され全8作品で再構成された珠玉の作品集。

2024年製作/85分/日本
製作・配給:アート・アニメーションのちいさな学校、Morc阿佐ヶ谷


あらすじ



代表作『話の話』『霧につつまれたハリネズミ』で世界的なアニメーション作家として知られるユーリー・ノルシュテインの作品集。柔らかく包む霧、降りこめる雨、狼の子が食べるジャガイモの熱さを、リアリティ溢れる表現と詩的な演出で観る人の心に優しく語りかける。今回は劇場初公開となる『おやすみなさいこどもたち』『ロシア砂糖CM』も上映。『おやすみなさいこどもたち』はロシアの子ども向け番組のオープニングとして制作され、ノルシュテインの愛犬がモデルで登場する。『ロシア砂糖CM』は砂糖会社のシンボルのライオンが活躍する4部作となる。まさに、ノルシュテインからの贈りものといえる珠玉の作品集。




解説


【上映作品】全8作品 合計85分


①『25日・最初の日』(9分)
②『ケルジェネツの戦い』(10分)
③『キツネとウサギ』(12分)
④『アオサギとツル』(10分)
⑤『霧の中のハリネズミ』(10分)
⑥『話の話』(29分)
⑦【日本未公開】『おやすみなさいこどもたち』OP/ED(3分)
⑧【日本未公開】ロシアの砂糖TVCM 4本(2分)


Yuriy Borisovich Norshteyn
ユーリー・ボリソヴィッチ・ノルシュテイン


1941年9月15日生まれ。ロシアのアニメーション作家。『25日-最初の日』(68)でデビュー。『キツネとウサギ』(73)『霧の中のハリネズミ』(75)『話の話』(79)等を制作。切り絵技法による、独特の詩的で繊細な作風が多くの人々を魅了し、映像詩人と評される。日本をはじめ世界中のアニメーション作家たちに多大な影響を与えている。30年以上の歳月をかけゴーゴリ原作『外套』を制作している。

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そっと寄り添う
ゆっくり生まれ変わる


本作が長編2作目となるノルウェーが生んだ才能アンダース・エンブレム監督の故郷オーレスンを舞台に、窓越しの淡い新緑、葉のざわめき、風の通る木陰、船にぶつかる波の音、新聞のページを捲る音など、何気ない日々のスナップショットを並べたような描写と共に、柔らかな色彩に包まれたこの作品は、静かな佇まいで絵の具が乾くのを見るかのように進む。何かを声高に叫ぶわけでもなく、世界で最も裕福な国の一つといわれるノルウェーに対する、微妙な疑問とメッセージをそっと囁くように投げかける。心拍数を安定させながら、心乱さず高揚させてくれる物語は、”語らずに語る”全てが愛おしいスローシネマだ。

2022年製作/78分/ノルウェー
原題または英題:A Human Position
配給:クレプスキュールフィルム


あらすじ



ノルウェー・オーレスン。ここはフィヨルドに囲まれた、色鮮やかなファサードの建物が立ち並ぶ美しい港町。夏を迎え、今は白夜の季節。この時期は、太陽の光がこの町の海と緑をさらに美しく照らし出す。アスタはこの町で、再び動き出そうとしていた。病気療養のため、地元新聞社の記者の仕事からしばらく離れていたが、臨時雇いながら復帰も決まった。心も体も、まだまだ万全ではないが、カンならそのうち取り戻せる…。アスタは自分をそう信じ、かつての職場に戻っていった。アスタが一緒に暮らすのは、病気ですっかり弱ってしまった心に癒しをくれる小さな猫一匹。そして自宅を職場に、古くなった椅子のリペアを手掛ける最愛のパートナー、ライヴ。特にライブとの他愛のない会話と穏やかでゆったりと過ごす時間は、今のアスタにとって何より大切なひと時だ。記者としてアスタが担当するのは、市内で起こるささやかな出来事や小さなトラブル。自宅に戻れば、ライヴと二人だけのリラックスした時間。静かに戻りつつあるアスタの日常。ある日、ライヴは新聞に掲載されていた記事に目を留める。それは『労働法違反で難民申請者が強制送還へ』と題された誌面の小さな記事。その内容が気になったアスタは翌日、記事を担当した記者に連絡をとる。わかったのは強制送還された彼の名はアスラン、そして勤めていた水産加工工場の連絡先…。




解説


夢のような時間がゆっくりと流れる、ノルウェーの哀愁漂う港町…
人生のちいさな一歩を踏み出す、優しさに満ちたスローシネマ


監督は、本作が長編2作目となるノルウェーが生んだ才能アンダース・エンブレム。フィヨルドに囲まれ、絵画のような色彩豊かな風景で「ノルウェーで最も美しい街」と称される監督の故郷オーレスンを舞台に、写真集を捲るように優しく美しい筆致で丁寧に描く。繰り返されるショット、音楽の不在、削ぎ落とされた行間、街の音はもちろん呼吸音まで聞こえてきそうな長い静寂…。アスタとライヴを取り巻く環境を、カメラは空気をも映し出すかのようにゆったりと物語る。自身のインスピレーションの源としてロベール・ブレッソンと小津安二郎を挙げるエンブレム監督は、劇中でも『お茶漬けの味』のセリフを登場させ、その小津愛溢れる演出には誰もがニヤリとするだろう。また、もう一つの主役とも呼べる椅子への想いが、二人をより結びつけている。ある喪失感を抱えた主人公の日常をそっと見守る子猫も、名脇役として作品に貢献している。


”語らずに語る”全てが愛おしい作品


主人公アスタを演じるのは、監督デビュー作『HURRY SLOWLY(原題)』に続いて再びタッグを組んだアマリエ・イプセン・ジェンセン。トラウマを抱える心の揺らぎや内に秘めた聡明さを、透明感を放ちながら抑制のきいた演技で表現。彼女に優しく寄り添うライヴ役にはマリア・アグマロ。そのコケティシュな仕草と歌声でほっこりと作品を彩る。柔道着を着て、着物を着る。日本の映画を観て、囲碁を打つ。箸を使って食事をする。少しずつ描かれる二人の機微を愛でるように心静かに見守るプロセスは、観るものを心和む気持ちに導いてくれるだろう。

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