上映した映画



第27回釜山国際映画祭 3 冠
第44回青龍映画賞 3 部門ノミネート
第22回ニューヨーク・アジアン映画祭最優秀長編映画賞ノミネート
第59回大鐘賞 新人監督賞ノミネート


一瞬の選択が取り返しのつかない破滅に
現代の社会問題<貧困、孤独、介護…>に根ざした濃密なサスペンス


貧困と孤独、高齢者をめぐる介護や認知症といった日本人にとっても他人事ではない問題を扱った本作は、一寸先さえ予測不能の濃密なサスペンスを全編にみなぎらせている。訪問介護士兼家政婦として献身的に働く主人公ムンジョンは善良な人間だが、介護中の突発的な事故によって人生の窮地に立たされ、急場凌ぎの“誤った選択”をしてしまう。イ・ソルヒ監督は、過酷な現実の中でささやかな幸せだけを願うムンジョンの切実な思いを繊細にすくい取りながら、彼女が陥った負のスパイラルが加速していく様をスリリングに描出。そのドミノ倒しのごとき急展開は、あまりにも皮肉な偶然の連鎖なのか、それともムンジョンの過ちが招いた必然的な運命なのか。ショッキングなラスト・シーンに打ちのめされた観客は、主人公がたどった人生の数奇なめぐり合わせに思いを馳せ、“生きる”という根源的なテーマについて考えずにはいられないだろう。

2022年製作/100分/韓国
原題:비닐하우스
配給:ミモザフィルムズ


あらすじ



ビニールハウスに暮らすムンジョンの夢は、少年院にいる息子と再び一緒に暮らすこと。引っ越し資金を稼ぐために盲目の老人テガンと、その妻で重い認知症を患うファオクの訪問介護士として働いている。そんなある日、風呂場で突然暴れ出したファオクが、ムンジョンとの揉み合いの最中に床に後頭部を打ちつけ、そのまま息絶えてしまう。ムンジョンは息子との未来を守るため、認知症の自分の母親を連れて来て、ファオクの身代わりに据える。絶望の中で咄嗟に下したこの決断は、さらなる取り返しのつかない悲劇を招き寄せるのだった——。




解説


予測不能のストーリー展開、衝撃のラストが大反響を呼び、
第27回釜山映画祭で新人監督としては異例の 3 冠に輝いたイ・ソルヒ監督のデビュー作


今や世界屈指のコンテンツ大国となった韓国では、その華やかさの陰で社会のさまざまな歪みが深刻化し、フィルムメーカーたちが独自の視点でそれらの問題と向き合ったシリアスなドラマや斬新なエンターテインメント作品を製作している。途方もない貧富の格差を背景にしたポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)、思春期の少女の無垢な眼差しを通して家父長制の弊害を描いたキム・ボラ監督の『はちどり』(18)がその代表例。国内外で絶賛を博したこれらの話題作に触発されるようにして、新人を含む多くの若手監督たちが厳しい現実を見すえた映画作りを実践している。ポン・ジュノ監督やイ・ジェヨン監督らを輩出した名門映画学校、韓国映画アカデミーで学んだ 1994年生まれのイ・ソルヒ監督の長編デビュー作『ビニールハウス』(22)も、上記の流れをくむ一作と言えるが、決して社会問題を声高に叫ぶ映画ではない。ソウル郊外のビニールハウスで暮らす中年女性の想像を絶する運命と、その果てに待ち受ける衝撃的なエンディングに誰もが息をのんで驚き、第27回釜山映画祭で 3 冠を獲得。韓国での封切り後 1 週間で観客動員 1 万人突破を達成するなど、同国のインディペンデント映画としては異例の反響を呼び起こした。


名優キム・ソヒョン渾身の新境地に韓国が震撼&絶賛!


主演のキム・ソヒョンが見せる渾身のパフォーマンスからも目が離せない。アクション大作『悪女/AKUJO』(17)や TV シリーズ『SKY キャッスル~上流階級の妻たち~』(18-19)、『誰も知らない』(20)、『Mine』(21)、『紙の月』(23)などで活躍する名優が、無名の新人監督が執筆したオリジナル脚本に魅了され、極限の感情表現を求められる新境地に挑戦。韓国のアカデミー賞と呼ばれる第59回大鐘賞を始め、第43回韓国映画評論家協会賞、第32回釜日映画賞、第43回黄金撮影賞で主演女優賞を、第13回美しい芸術家賞では独立映画芸術家賞、第31回大韓民国文化芸能大賞で最優秀賞を獲得し、6 冠の快挙を成し遂げた。


ビニールハウス ‟半地下はまだマシ”


『パラサイト 半地下の家族』(19)でも注目を浴びた韓国の住居貧困。元々は作物栽培のための農業施設であるビニールハウスもまた、不動産価格の高騰や経済の低迷により、正規の住宅を失った低所得者層、移民労働者が転がり込むなど、半地下や屋上部屋よりもさらに「最底辺」住居として社会問題となっている。

オフシャルサイトはこちら >>










2023年 第73回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門 最優秀作品賞&国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)


それは世界と出会い直す魔法


世界的に注目を集めるベルギーの新鋭バス・ドゥヴォス監督がその祝祭的世界観をさらに飛躍させた最新作「Here」は、誰の目にも触れない、植物学者の女性と移民労働者の男性が織りなす些細で優しい日常の断片をつづったヒューマンドラマ。
他者と出会うことの喜びが、観る者の心をしずかに震わせ、ゆるやかに展開してゆく物語に身を委ねると、普段は見落としがちな、人のさりげない優しさや思いやりに気づかせてくれる。

2023年製作/83分/G/ベルギー
原題:Here
配給:サニーフィルム


あらすじ



ブリュッセルに住む建設労働者のシュテファンは、アパートを引き払い故郷のルーマニアに帰国するか悩んでいる。姉や友人たちにお別れの贈り物として冷蔵庫の残り物で作ったスープを配ってまわる。出発の準備が整ったシュテファンは、ある日、森を散歩中に以前レストランで出会った女性のシュシュと再会。そこで初めて彼女が苔類の研究者であること知る。足元に広がる多様で親密な世界で2人の心はゆっくりとつながってゆく。




解説


いま最も繊細で美しく、最も心震わせる映像を紡ぐベルギーのバス・ドゥヴォス


長編第1作『Violet』が2014年ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門で審査員大賞を受賞。続く長編第2作『Hellhole』も2019年の同映画祭パノラマ部門に選出されると、カンヌ国際映画祭監督週間では長編3作目『ゴースト・トロピック』が正式出品となる。最新作『Here』は2023年のベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門の最優秀作品賞と国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)の2冠に輝く。いずれも多言語・多文化が共生し「ヨーロッパの縮図」とも言われるベルギーにおいて、現代社会では見落とされてしまう些細な日常の断片をすくい上げて描くスタイルが特徴的だ。16mmフィルムの淡い美しさをたたえたスタンダードサイズの映像と、唯一無二のサウンドスケープを響かせるブレヒト・アミールのギター、ゆるやかに展開してゆく物語に身を委ねると、ふだんは見落としがちな、人のさりげない優しさや思いやりに気づかせてくれる。


「ヨーロッパの縮図」
多言語・多文化が共生する街


『Here』はベルギー、ブリュッセルの移民社会を背景に物語を描いている。ベルギーはヨーロッパの中心に位置しているため、歴史的に様々な国に占領されてきた一方、国際的な交流も盛んだった。現在は、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)の本部が首都ブリュッセルにあるため、欧州の政治の中心地であり、ヨーロッパの交差点とも言われる。
ベルギーは、1830年に王国となったが、宗教観の違いなどもあり連邦制度となり、全国の中央政府と、ブリュッセル首都圏、フランダース、ワロンの3つの地域政府に別れ、各地域で異なる言語を公用語としてきた。バス・ドゥヴォス監督はフランダース出身で、母語はオランダ語系のフラマン語で、映画もフランダースのファンドから助成されているが、映画はブリュッセルを舞台にしていて、主にフランス語が使用されている。
バス・ドゥヴォス監督は、2019年のカンヌ国際映画際のインタビューで「ブリュッセルは異なる国から移住してきた多くの人々でひしめきあい、それぞれがここをホームとして暮らそうとしています。ブリュッセルをさらに特異な都市にしているのは多言語都市であることです。ここでは会話の始めに自分が話していることを理解できるか確認する事が頻繁にあります。そのような街で私は何を頼りに人は他者と繋がれば良いのか常々考えています。」と語った。

オフシャルサイトはこちら >>











来たる2025年に生誕100周年を迎える鍵盤の皇帝
その音楽と人生を綴った伝記映画がスクリーンに登場!


ジャズ史上最も偉大で人気のピアニストのひとり、オスカー・ピーターソン。陽気なキャラクター、聴く者をハッピーにするリズムとハーモニー、そして誰もが憧れる明快で魅力的な音質と超絶技巧――かのルイ・アームストロングは彼のことを「4本の手を持つ男」と呼んだという。日本でも『プリーズ・リクエスト』をはじめとする名盤の数々で知られ、来日公演も果たし、ジャズファンもアーティストも誰もがその影響と愛を口にする。そんなオスカー・ピーターソンの人生に迫るドキュメンタリーが誕生した。

2020年製作/81分/G/カナダ
原題:Oscar Peterson: Black + White
配給:ディスクユニオン


あらすじ



差別との闘い、病気と復活までの困難な道のり、家族愛について、多数の本人インタビューを収録。そして、そんなオスカー・ピーターソンが多くの人々にリスペクトされ続けるその理由を、実際にジャンルと世代を超えて彼の音楽に影響を受けてきたスター・ミュージシャンたち――ビリー・ジョエル、クインシー・ジョーンズ、ラムゼイ・ルイス、ハービー・ハンコック、ブランフォード・マルサリス、ジョン・バティステら が語り尽す。さらに妻・娘ら家族による、その旅立ちまで晩年の貴重な証言も収録され、彼の知られざる強さ、魅力に迫ります。




解説


差別との闘いと“自由への讃歌”
病との闘いと復活


陽気なキャラクターと幸福感に満ちたリズム&ハーモニー、明快で魅力的な音質と超絶技巧で人気を集め、日本でも『プリーズ・リクエスト』などの名盤の数々で知られるオスカー・ピーターソン。

その順風満帆に映る音楽人生と、明るく魅力的なピアノスタイルの裏には、黒人であるゆえの長きにわたる差別との戦いがあった。1962年にオスカーが作曲した『自由への賛歌』は1960年代公民権運動の賛歌になり、その音楽的、社会的影響は分断の続くアメリカで今もなお響き渡っている。

1993年68歳には脳梗塞を発症。ピアニストとしては終わりかと思われたが、懸命のリハビリで奇跡の復活を遂げ、2004年には来日を果たすほどに回復した。


Oscar Peterson
オスカー・ピーターソン


1925年8月15日 - 2007年12月23日(82歳没)。カナダ、ケベック州モントリオール出身のジャズピアニスト、作曲家。モントリオール黒人コミュニティーで幼少の頃よりクラシック音楽を学び育つ。アメリカ人ではない出自にもかかわらず、ジャズの歴史に刻まれる代表的なミュージシャンに挙げられる。故郷カナダでは英雄であり、新1ドルコインの肖像にもなる。2025年には生誕100年を迎える。

オフシャルサイトはこちら >>























2020年 第70回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門出品


A24×ケリー・ライカート
世界中の映画人が愛し、うらやんだ傑作がついに日本へ上陸!


現代アメリカ映画の最重要作家と評され、今世界中で最も高い評価を受けている監督のひとりであるケリー・ライカート監督。日本で彼女の作品を観られる機会は限られていたが、2021年に監督特集上映が行われると、その作品性の高さから異例の満席回が続出し、大きな話題となった。そんな映画ファンが愛してやまないケリー・ライカート監督の作品がついに、日本の劇場で初公開!

西部開拓時代のアメリカで成功を夢みる2人の男の友情を、アメリカの原風景を切り取った美しい映像と心地よい音楽にのせて描いたヒューマンドラマとなった本作は、世界中の映画祭で計157部門にノミネート、27部門を受賞し、映画人からの評価も高く、ポン・ジュノ、ジム・ジャームッシュ、トッド・ヘインズ、濱口竜介ら、名だたる監督たちが口を揃えて称賛している。

さらに本国配給を今世界中の映画ファンに最も愛される配給会社A24 が行い、ケリー・ライカート監督の最高傑作との呼び声も高い本作が誕生した。

2020年製作/122分/G/アメリカ
原題:First Cow
配給:東京テアトル、ロングライド


あらすじ



物語の舞台は西部開拓時代のオレゴン州。アメリカン・ドリームを求めて未開の地にやってきた料理人のクッキーと、中国人移民のキング・ルー。共に成功を夢見る2人は自然と意気投合し、やがてある大胆な計画を思いつく。それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”であるたった一頭の牛からミルクを盗み、ドーナツで一攫千金を狙うという、甘い甘いビジネスだったー!ドーナツを通して、男たちの間に少しずつ友情が芽生えていく過程を美しく描いたこの物語。豊かな自然が息づく原風景を切り取った映像美や心地よい音楽が2人の旅路を彩り、観客は本作を通して、これまでに見たことのない新しいアメリカを発見することでしょう。




解説


アメリカを見つめ続ける 孤高の映画作家
ケリー・ライカート監督作 日本“初”全国公開


現代アメリカ映画の最重要作家と評され、最も高い評価を受ける監督のひとりであるケリー・ライカート。映画ファンの間で確かな人気を誇りながらも、これまで紹介される機会が限られていたライカート監督作品がついに、日本の劇場で初公開される!長編7作目となる『ファースト・カウ』は、世界の映画祭でお披露目されるやいなや、たちまち絶賛の声が上がり157部門にノミネート、27部門を受賞。さらに映画人からの評価も高く、『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督が「とてつもなく、うらやましい」とその才能を羨望。他にもジム・ジャームッシュ、トッド・ヘインズ、濱口竜介ら、世界の名だたる監督たちも本作を称賛している。


A24×ケリー・ライカート 映画史に刻まれる最強タッグが実現


本作の本国配給を行なったのは、いま映画ファンに最も愛される配給会社A24。作家ファーストでありながら大ヒット作を次々と世に送り出しているA24と、一貫したスタイルで映画を撮り続けているライカート監督のタッグが初めて実現。彼女の最高傑作との呼び声も高い本作が誕生した。

オフシャルサイトはこちら >>












多彩で、情熱的で、刺激的。
誰も知らない「美術館の舞台裏」へ、ようこそ。


モネ、ルノワール、ゴッホ、ピカソ……誰もが知る名画や数々の傑作を有する「国立西洋美術館」。大正から昭和にかけ、稀代のコレクターとして活躍した松方幸次郎の「松方コレクション」を基礎に、絵画、彫刻、版画、素描などおよそ6,000点の作品を所蔵し、東アジア最大級の西洋美術コレクションを誇る。2016年には世界的建築家ル・コルビュジエの建築作品のひとつとして世界遺産に登録され、日本を代表する美術館として、国内外から多くの来場者を集めている。

2020年10月、ル・コルビュジエが構想した創建時の姿に近づける整備のために休館した美術館の内部にカメラが入り、一年半にわたり密着。そこから見えてきた、美術館の「ほんとうの姿」とは…。アートの見方をがらりと変える、必見のドキュメンタリーが誕生した。

2023年製作/105分/G/日本
配給:マジックアワー


あらすじ



20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエが設計し、2016年に世界文化遺産に登録された、誰もが知る名画や数々の傑作を有する東京・上野の国立西洋美術館の舞台裏を描いたドキュメンタリー。2020年10月より1年半かけて行われた整備工事のため、美術館が有する数々の所蔵作品の“お引越し”をカメラが記録。通常は非公開の収蔵庫の様子や、展示作品がすべて取り払われる様子など、普段は決して見られない驚きの光景が目の前に広がる。そこから見えてきた、美術館の「ほんとうの姿」とは…。アートの見方をがらりと変える、必見のドキュメンタリーが誕生した。




解説


ロダン彫刻「考える人」がぐるぐる巻きに、「カレーの市民」が宙吊りに…!? 
知られざる、美術品の“お引越し”作業


2020年10月より1年半かけて行われた整備工事のため、美術館が有する数々の所蔵作品の“お引越し”をカメラが記録。通常は非公開の収蔵庫の様子や、展示作品がすべて取り払われる様子など、普段は決して見られない驚きの光景が目の前に広がる。国立西洋美術館は、2022年4月9日にリニューアルオープン。ル・コルビュジエによる当初の前庭の設計意図が正しく伝わるように、1959年開館当時の姿に極力近づけた姿をお披露目した。


美術館で働く、美を守り、伝える人々


所蔵品の保存修復作業、コレクションの調査研究や海外・地方美術館への巡回展、特別展の企画開催…美術館の仕事は多岐にわたる。館長、美術史系学芸員、保存科学や情報資源の研究者、修復家など、専門知識と技術を有し「美」を守り支える、美術館のなかで働く人々の情熱と活動に迫る。


美術館のすぐそばに迫る“危機的状況”とは—


絢爛たる名画、傑作の数々が来場者を楽しませる一方で、美術館をとりまく現状は厳しさを増している。関係者や専門家へのインタビューからは、日本の文化行政が抱える難問と、彼らの目前に迫る“危機的状況”が浮かびあがる。

オフシャルサイトはこちら >>





映画のご予約はこちら

予約は下記のボタンより可能になります。ご覧いただいた映画の半券を持っていただいた方には2回目から1,000円でご鑑賞いただける「シネマポストのリピート割」もございます。お得なサービスなので、ぜひご利用ください。