上映した映画



第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)グランプリ 受賞


インド映画史上初の快挙!!


ままならない人生に葛藤しながらも自由に生きたいと願う女性たちの友情を、光に満ちた淡い映像美と幻想的な世界観で描き、第77回カンヌ国際映画祭(2024年)にてインド映画として初めてグランプリに輝いた作品。
監督を務めたのはムンバイ出身の新鋭パヤル・カパーリヤー。初長編ドキュメンタリー『何も知らない夜』は2021年カンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、ベスト・ドキュメンタリー賞であるゴールデンアイ賞を受賞。2023年には山形国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門でロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)受賞するなど、15の映画賞にノミネート、9つの賞を受賞している。『私たちが光と想うすべて』は初長編劇映画ながら、第77回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、世界から注目を集める映画監督の一人となった。

2024年製作/118分/PG12/フランス・インド・オランダ・ルクセンブルク合作
原題または英題:All We Imagine as Light
配給:セテラ・インターナショナル


あらすじ



インドのムンバイで看護師をしているプラバと、年下の同僚のアヌ。二人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、職場と自宅を往復するだけの真面目なプラバと、何事も楽しみたい陽気なアヌの間には少し心の距離があった。プラバは親が決めた相手と結婚したが、ドイツで仕事を見つけた夫から、もうずっと音沙汰がない。アヌには密かに付き合うイスラム教徒の恋人がいるが、お見合い結婚させようとする親に知られたら大反対されることはわかっていた。そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァティが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村へ帰ることになる。揺れる想いを抱えたプラバとアヌは、一人で生きていくというパルヴァティを村まで見送る旅に出る。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、二人はそれぞれの人生を変えようと決意させる、ある出来事に遭遇する──。




解説


映画の未来を照らす
新鋭パヤル・カパーリヤー監督初長編劇映画


第77回カンヌ国際映画祭でインド映画史上初のグランプリを受賞し話題となった、新鋭パヤル・カパーリヤー監督初長編劇映画。都会で生きる女性たちが、人生のままならない状況に対峙しながら、ありのままでいたいと願い支え合う姿に、国や文化を超えた共感が湧き上がる感動作。カパーリヤー監督と同世代で『バービー』旋風で全世界を席巻したグレタ・ガーウィグ監督を審査委員長に、日本から審査員として参加した是枝裕和監督も本作を絶賛。ゴールデン・グローブ賞など100以上の映画祭・映画賞にノミネートされ25 以上の賞を受賞、オバマ元⼤統領の2024年のベスト10に選ばれ、70か国以上での上映が決定するなど、世界中から⾼評価を獲得している。
光に満ちたやさしく淡い映像美、洗練されたサウンド、そして夢のように詩的で幻想的な世界観を紡ぎ出し、これまでのインド映画のイメージを一新、「ウォン・カーウァイを彷彿とさせる」と評判を呼んだ。 さらに、カパーリヤー監督は、2025年カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員にも大抜擢。シャーロット・ウェルズ監督(『aftersun/アフターサン』)、セリーヌ・ソン監督(『パスト ライブス/再会』)など、30 代の若手女性監督たちの作品が世界の映画祭で脚光を浴びる中、現在39歳のカパーリヤー監督もまた、世界中から新たな才能として熱い注目を集めている。


ままならない人生に揺れる女性たちの友情を描く
儚いけれど決して消えない光を放つ感動作


ムンバイの病院で働くプラバは既婚だが、夫は外国へ行ったきり音沙汰がない。同僚のアヌは密かにイスラム教徒の恋人がいるが、親からお見合い結婚を迫られている。プラバとアヌは、ルームメイトだけれど少し距離がある。真面目で年上のプラバを演じるのは、『Biriyaani(原題)』でケーララ州映画賞・主演⼥優賞を受賞、2024年度東京フィルメックスで話題を呼んだ『女の子は女の子』に出演したカニ・クスルティ。陽気なアヌには『Ariyippu(原題)』でロカルノ国際映画祭国際コンペティション部門主演女優賞にノミネートされたディヴィヤ・プラバ。病院の食堂で働き、住居を追われ故郷に帰るパルヴァティには、日本でもスマッシュヒットを記録した『花嫁はどこへ︖』のベテラン俳優チャヤ・カダム。生きる様を表現するかのようなリアルな演技が、観る者の心の芯を静かに深く揺さぶる。
世代や境遇、性格も異なる三人の女性の共通点は、ままならない人生に葛藤しながらも、自由に生きたいと願っていること。はじめは分かり合えなかった三人が、互いを思いやり支え合っていく。そこにあるのは声高な共闘ではなく、ただ相手の存在を“認める”という温かな視線。彼女たちの姿に、国境も人種も超えて、共感が広がる。世界中に光を届ける新たな傑作が、この夏、日本を照らし出す。

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第66回ベルリン国際映画祭(2016年) 正式出品作品


抵抗の種は、生活の中に


イギリスの作家ジョン・バージャーを敬愛し、1980年代から親交を深めてきたティルダ・スウィントンが、2009年にロンドンの実験的映像プロダクション「デレク・ジャーマン・ラボ」と共同で本作を企画。スウィントンと2人の子どもたち、バージャーを慕うアーティストたちが、フレンチ・アルプスの村カンシーに暮らすバージャーの元を訪ね、戦争の記憶、人間と動物、政治とアート、そして次世代への継承について対話を繰り広げる姿を、カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して描きだす。

2015年製作/90分/イギリス
原題または英題:The Seasons In Quincy: Four Portraits of John Berger
配給:BABELO


あらすじ



ジョン・バージャーとティルダ・スウィントンが彼の詩や絵を題材とし、父親の記憶と戦争、歴史、世代を超えた価値観の継承と更新など、率直に語りあう「聞き方」。『Why Look at Animals?』や『Into the Labour』に収められた彼の動物についての記述が、アルプスの高原に暮らす動物たちの姿とともに語られる「春」。彼が発する言葉をヒントに、政治におけるアートの役割について討論を繰り広げる「政治の歌」。親から子へと主題が移る、バージャーとスウィントンが互いの父について話した「聞き方」 への応答でもある「収穫」。カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して、戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった、バージャーが一貫して取り組んできたテーマを一つ一つすくい取り、次世代にバトンを繋いでいきます。




解説


稀代のストーリーテラーとの
“思考のレッスン”


英国の作家ジョン・バージャーは、1950年代末にデビューし、2017年に90歳でこの世を去るまで、美術批評、詩作、戯曲、小説といった多彩な分野で旺盛な表現活動を展開しました。1972年には小説「G.」でブッカー賞を受賞。また代表作『Ways of Seeing』(邦題『イメージ:視覚とメディア』)は、西洋美術の商業主義や女性の描かれ方を通して、西洋社会のものの見方のバイアスを批評し、今もなお世界中で版を重ねる象徴的な作品となりました。韓国では近年、著書の多くが翻訳されているほか、日本でも西欧の移民労働者を描いた『A Seventh Man』(邦題『第七の男』)を始め、2024年以降邦訳が立て続けに出版されています。


オスカー女優ティルダ・スウィントンが慕った
反骨の作家、その素顔と最後の日々


2007年に映画『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、今年1月には最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が日本公開された英国の女優ティルダ・スウィントンにとって、ジョン・バージャーは特別な存在であり続けてきました。1989年の映画『Play Me Something』(日本未公開)で共演を果たしたふたり。軍人の父を持ち、時を隔てて同じ日にロンドンで生まれたという事実が互いの結びつきを強め、長年にわたって親交を深めてきました。スウィントンが中心となり、ロンドンの実験的映像プロダクション、「デレク・ジャーマン・ラボ」と製作した本作は、彼女がバージャーの住むフレンチ・アルプスの村カンシーを訪ねる場面から始まります。カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して、戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった、バージャーが一貫して取り組んできたテーマを一つ一つすくい取り、次世代にバトンを繋いでいきます。“小さな声”、“声なき声” に耳をすませ、生涯を通じて “文化的抵抗”(Cultural Resistance)を止めなかった語り手、ジョン・バージャー。その鋭くも温かい世界へのまなざしが、スウィントンを始め、彼を慕う人々との対話を通じて立体的に浮かび上がります。それはまた、混沌とする現代社会にあって、バージャーが今に遺した置き手紙のようにも見えてきます。

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第39回インディペンデント・スピリット賞(2023年)ジョン・カサヴェテス賞受賞


フォーチュンクッキーが運んでくる幸せの予感…?
甘くてほろ苦い、ジム・ジャームッシュにインスパイアされたインディーズ映画


フォーチュンクッキーをきっかけに、孤独な女性が新たな一歩を踏み出す姿をオフビートなユーモアを交えて描いた本作は、第39回サンダンス映画祭でプレミア上映され、第39回インディペンデント・スピリット賞ではジョン・カサヴェテス賞を受賞。心地よいノスタルジーを想起させる、モノクロームで綴られた映像は、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)や『ダウン・バイ・ロー』(86)など、ジム・ジャームッシュ監督の初期作を彷彿とさせながら、「アメリカのインディペンデント映画を刷新することに成功した」(Los AngelesTimes)と話題を呼び、映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家たちから98%という高い支持を得た。

2023年製作/91分/G/アメリカ
原題または英題:Fremont
配給:ミモザフィルムズ


あらすじ



カリフォルニア州フリーモントにあるフォーチュンクッキー工場で働くドニヤは、アパートと工場を往復する単調な生活を送っている。母国アフガニスタンの米軍基地で通訳として働いていた彼女は、基地での経験から、慢性的な不眠症に悩まされている。ある日、クッキーのメッセージを書く仕事を任されたドニヤは、新たな出会いを求めて、その中の一つに自分の電話番号を書いたものをこっそり紛れ込ませる。すると間もなく1人の男性から、会いたいとメッセージが届き…。




解説


映画初出演アナイタ・ワリ・ザダ × 大人気俳優ジェレミー・アレン・ホワイト
チャーミングなガール・ミーツ・ボーイの物語


監督はイラン出身で、イギリス、ロンドンで育ったババク・ジャラリ。2016年に『Radio Dreams(原題)』がロッテルダム国際映画祭など数々の映画祭で高く評価され、続く『Land(原題)』(18)が第68回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に出品されるなど、着実にキャリアを築いてきた。主演は、本作が映画デビュー作となるアナイタ・ワリ・ザダ。母国アフガニスタンでテレビ局の司会者やジャーナリストとして活躍していたが、主人公ドニヤ同様、タリバンが復権した2021年8月にアメリカへと逃れてきた。ドニヤのキャラクターに共感を覚えたという彼女は、アメリカに来てわずか5ヵ月で、演技も未経験だったにも関わらず、熱意で見事公募の中から選ばれた。彼女自身が歩んできた道程と重ねながら、ババク監督は、ドニヤの抱える悲しみや迷い、そして「幸せになりたい」という誰もが抱く普遍的な願いを共感のまなざしであたたかく描き出す。ドニヤがブラインドデートの道中で予期せず出会う、自動車整備士のダニエル役を演じたのは、今最もハリウッドで注目される俳優の一人、ジェレミー・アレン・ホワイト。大人気ドラマシリーズ『一流シェフのファミリーレストラン(原題:The Bear)』(22-)で主人公カーミー役を演じ大ブレイク。2025年のゴールデングローブ賞では、同作で3年連続となるテレビ部門の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した。本作へは、ジェレミーが10代のときに出演した『アフタースクール』(08)のアントニオ・カンポス監督と、ババク監督が親しい友人であったことから出演が実現。脚本を気に入ったジェレミーは、短い出演シーンながらも強いインパクトを残し、チャーミングなガール・ミーツ・ボーイの物語へと映画を転がしていく。さらにセラピストのアンソニー役には、マーベル・スタジオ映画『アントマン』(15)『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(23)などで知られる俳優、コメディアンのグレッグ・ターキントンが配役。時折光るユーモアのセンスで確かな存在感を放っている。またラッパーで『ホワイト・ボイス』(18)の監督としても知られるブーツ・ライリーもカメオ出演。個性豊かなキャストが脇を固めた。


多様な文化と歴史が混ざり合う、
アメリカ西海岸の都市フリーモントを舞台に
未来へのささやかな希望をくるんだ一作


舞台となるフリーモントの街並みも魅力的だ。サンフランシスコやロサンゼルスのような開放的な西海岸のイメージとは異なり、多くのテクノロジー企業が拠点を置くベッドタウンで、アフガニスタン系やアジア系、特に中国、インド、フィリピン系の多様な民族が暮らしている。またチャールズ・チャップリンの作品で知られる映画スタジオ、エッサネイ社がかつてスタジオを構え、『チャップリンの失恋』(1915)をはじめ数多くのチャップリン作品を撮影、ハリウッド史において重要な場所でもある。本作ではドニヤの足取りを追いかけながら、そんな多様な文化と歴史が混ざり合うフリーモントの姿を垣間見ることができる。ほんの“一粒”の勇気が「未知の世界へ」と導いてくれるかもしれない。哀愁を帯びたヴァシュティ・バニヤンの名曲「Diamond Day」のハーモニーにのせて、そんな爽やかな希望の風が吹き抜ける一作。

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第20回大阪アジアン映画祭 インディーフォーラム部門正式出品作品


お互いの人生を理解しあえば自分の生きてきた意味を掴める


ある介護施設の人間模様を通じて生と死の関係を深く、そして温かく描いた、現代に届けるドラマ。京都市のデイケア施設「ナイスデイ」を運営する伊藤芳宏の著書を原案に、『嵐電』のプロデューサー・西田宣善が監督、『夜明けまでバス停で』の梶原阿貴が脚本を手がけ、現代社会に生きる女性の視点を加えて描かれた作品。
『嵐電』『夜明けまでバス停で』の大西礼芳が優希役で主演を務め、劇中の漫画とピアノ演奏も自ら手がけた。優希の父・宏司を伊藤洋三郎、施設のベテラン職員・洋子を中島ひろ子、所長・武藤を田山涼成が演じ、カトウシンスケ、筒井真理子、田中要次、梅沢昌代が共演。

2025年製作/91分/日本
配給:渋谷プロダクション


あらすじ



東京でアルバイトをしながら漫画を描いている夏川優希は、父・宏司が転落事故で入院した知らせを聞いて京都の実家に戻ってくる。ちょうど出版社に持ち込んでいた漫画の原稿も不採用となり、先が見えないまま京都で暮らすことに。父は退院後、介護施設「ハレルヤ」に通所を始め、優希も付き添いで行ってみると、そこは利用者と職員が和気あいあいと談笑しリハビリテーションに励む、居心地の良さそうな空間だった。明るいベテラン職員・向田洋子や、ケアマネジャー・野村隼人、利用者の人々と「ハレルヤ」で交流しながら、いつしか温和な笑顔で利用者や職員を見守る、武藤所長の考え方の深さに魅かれていく。




解説


生と死の関係を深く、そして温かく描いた、
現代に届けるにふさわしい映画


原案は、京都市右京区でデイケア施設「ナイスデイ」を運営する伊藤芳宏の著書「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」(幻冬舎刊)。利用者のライフストーリーの聞き取りを治癒に活かす独自の取り組みは、介護業界を越えた大きな反響を呼んでいる。 監督は、京都と東京を拠点に映画のプロデュースを続け、ご当地映画といえ 2019 年の『嵐電』で高い評価を受けた西田宣善。2 人の出逢いから新たな京都発映画が生まれた。本作は、西田の初の劇場映画監督作となる。脚本は、『夜明けまでバス停で』でキネマ旬報脚本賞などを受賞した梶原阿貴。伊藤の著書に現代社会に生きる女性の視点を加えてフィクション化。より活き活きとした広がりを持たせている。  


心に寄り添う演技で紡ぐ、命の物語


主人公の漫画家・夏川優希を演じるのは『STRANGERS』、『初級演技レッスン』などの映画や舞台で注目度上昇中の大西礼芳。前半は何事にも受け身だった優希が自分の意志で走り出すようになる過程を繊細に表現し、新しい代表作となるにふさわしい魅力を見せてくれる。編中のマンガとピアノ演奏も、自身で手がけているのにも注目。 優希の父で、頸髄損傷で生活の自由を奪われた絶望と闘う宏司を演じるのは伊藤洋三郎。施設で明るく奮闘するベテラン職員・洋子役は中島ひろ子。利用者と職員どちらも仲間として信頼の目で見つめる所長役は田山涼成。そのほかカトウシンスケ、筒井真理子、田中要次、梅沢昌代など、実力派キャストが脇を固め、誰もが自分だけの人生を生きているし、生きて良いのだというこの映画の根幹のメッセージを見事に体現している。

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第77回カンヌ国際映画祭(2024年) 特別招待作品
第61回台北金馬奨(2024年) 劇映画部門 最優秀作品賞・監督賞受賞

第25回東京フィルメックス(2024年)  観客賞受賞


コロナ禍についての
まったくユニークで重要な映画


『天安門、恋人たち』などの名匠ロウ・イエ監督が、中国・武漢に近い都市を舞台に、映画制作に携わる人々の姿を通してコロナ禍の「集団的トラウマの記録」をリアルに描いた作品。
フェイクドキュメンタリーのスタイルを採りながら、コロナ禍で実際に撮影されたスマホの映像を盛り込んで多層的に描きだす。2024年・第77回カンヌ国際映画祭では特別招待作品としてドキュメンタリー部門にて上映され、第61回台北金馬奨では劇映画部門の最優秀作品賞・監督賞を受賞した。第25回東京フィルメックスで観客賞を受賞。

2024年製作/107分/G/シンガポール・ドイツ合作
原題または英題:⼀部未完成的電影 An Unfinished Film
配給:アップリンク


あらすじ



監督のシャオルイ(マオ・シャオルイ)は、10年前に中断されたクィア映画の撮影を再開するため、キャストとスタッフを集め説得する。そして2019年、10 年間電源が入っていなかったコンピューターを起動した。2020年1月、撮影がほぼ完了した矢先、新種のウイルス(コロナ)に関する噂が広まり始める。不穏な空気が漂う中、武漢から来たヘアメイクが帰宅を余儀なくされ、スタッフ達はスマホでニュースを追い続ける日々を送る。一方、シャオルイ監督は再び撮影を中断するかどうかの決断を迫られる。そんな中、一部のスタッフと俳優はホテルが封鎖される前の脱出に成功するものの、残ったスタッフはホテルの部屋に閉じ込められたまま、すべてのコミュニケーションがスマホの画面だけに制限される。そして武漢はロックダウンする。スタッフたちはビデオ通話を通じて連絡を取り合い、ホテルに閉じ込められたままの主演俳優のジャン・チェン(チン・ハオ)は、北京で1か月の赤ん坊と共に部屋に閉じ込められている妻サン・チー(チー・シー)を元気づけようと奮闘する。




解説


コロナパンデミックの「集団的トラウマの記録」をリアルに描いた傑作


映画の冒頭、10年前に撮影された未完成のクィア映画を完成しようとスタッフが集められる。そこで編集用のモニターに映し出される映像は、ロウ・イエ監督の過去作『スプリング・フィーバー』(2009)『二重生活』(2012)『シャドウプレイ』(2018)などの映像。それらの作品の主人公を演じたジャン・チェン(チン・ハオ)が俳優役としてスタジオに訪れる。シャオルイ監督と話し合いが行われ、撮影が再開される。映画は虚実が交錯する設定で始まる。
映画制作は無事に開始されるが、未知のウィルスに関する不確かな情報が錯綜する中、ホテルはロックダウンされ、スタッフ達はホテルに閉じ込められる。劇中では、コロナ禍で実際に撮影されたスマホの縦型動画が次々とスクリーンに映し出される。


『天安門、恋人たち』以来の最高傑作


本作は、2024年第77回カンヌ国際映画祭特別招待作品として上映されると同時に、映画祭でドキュメンタリー作品に与えられる「金の眼賞」にもノミネートされた。英ガーディアン紙に「コロナ禍についての、まったくユニークで非常に重要な映画。『天安門、恋人たち』以来の最高傑作。☆☆☆☆☆。」と絶賛の評が掲載された。
2024年11月の中華圏最大の映画祭、台北金馬映画祭では、金馬奨の劇映画部門の最優秀作品賞と監督賞のダブル受賞。BBC中国語において高雄映画祭のディレクターを務めたチェン・ビンホン氏は「COVID-19により中国は大きく揺らぎました。ただ映画ではそのことを明確には語りません。中国の第6世代の監督であるロウ・イエは対立を求めるのではなく、ただ現実をリアルに映し出そうとしています」と評した。
ドキュメンタリーと劇映画の要素を融合させたフェイクドキュメンタリーという形式に加え、コロナ禍で実際に撮影されたスマホ映像を織り交ぜることで、虚実が多層的に交錯する映画となっている。

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