上映した映画



人間国宝・野村万作の芸境に迫る至高のドキュメンタリー


伝統芸能・狂言の第一人者であり、芸歴90年を超えて現在もなお舞台に立ち続ける野村万作。2023年には文化勲章を受章し、翌24年6月には受章記念公演を開催、ライフワークとして磨き上げてきた珠玉の狂言「川上」を上演した。本作では、その公演が行われた特別な1日に寄り添いながら、万作が自身の過去に対して思い浮かべる“六つの顔”をアニメーションで表現するなど、大胆かつ繊細なアプローチで彼の芸境に迫る。

2025年製作/82分/G/日本
配給:カルチュア・パブリッシャーズ


あらすじ



650年以上にわたり、生きとし生ける者の喜怒哀楽を表現し、人々の心を魅了し続けてきた「狂言」。その第一人者であり、94歳の今もなお現役で舞台に立ち続ける人間国宝の狂言師・野村万作は、2023年に文化勲章を受章した。映画『六つの顔』では、受章記念公演が行われた特別な1日に寄り添いながら、万作の歩んできた軌跡と現在の姿を浮かびあがらせる。また、ライフワークとして取り組み、磨き上げてきた夫婦愛を描く珠玉の狂言「川上」を物語の舞台である奈良・川上村の荘厳な原風景とあわせて贅沢に収録。万作が長年追求してきた世界観をその至芸とともにスクリーンに刻む。さらには、90年を超える芸歴のなかで先達たちから受け取り繋いできた想いや、今なお高みを目指して芸を追求し続ける万作の言葉を収めたインタビューも交え、息子・野村萬斎や孫・野村裕基をはじめとする次世代の狂言師と共に舞台に立つ模様を臨場感溢れる映像で映し出す。




解説


日本映画界を代表する製作陣が集結!


監督は『ジョゼと虎と魚たち』、『のぼうの城』などを手掛け、田中泯を追ったドキュメンタリー『名付けようのない踊り』でも高い評価を受ける犬童一心。また、万作が過去を振り返るなかで心に浮かぶ「六つの顔」を『頭山』で米アカデミー賞にノミネートされた山村浩二がアニメーションで表現。ナレーションを俳優のオダギリジョーが務めるなど日本映画界を代表する製作陣が集結。監修は野村万作、野村萬斎が手掛けた。 モノクロームで映し出される「現在」、アニメーションで紡がれる「過去」、そしてカラーで立ち現れる狂言「川上」の研ぎ澄まされた美しさ。豊かな映像表現で織りなす、至高のドキュメンタリー映画が誕生した。


狂言とは


「狂言」は、約650年の歴史を持つ日本の伝統芸能。2008年にユネスコ無形文化遺産に登録され、海外からも高く評価されている。「能」と同じく日本で最も古い演劇のひとつで、舞台装置や照明がない専用の「能舞台」で演じられる。「狂言師」という専門の役者が、自分の声や身体を駆使して、いろいろな物事がまるでそこにあるかのように演じるのが特徴で、「素手の芸」ともいわれる。そのため狂言師は、声であれば、しゃべる・語る・謡う、動きであれば、パントマイムのような動き・様式的な舞・アクロバットのような曲芸など、非常に豊かな表現の技術を「型」として身につける。狂言に登場する人物は、身近にいそうな人ばかり。日常的な事柄を題材に、人間だれしもが身に覚えのありそうな心の動きや関係を、大らかで洗練された笑いとともに表現する。なかには、猿・狐・狸や鬼、蚊の精や茸までもが人間と同じように活躍する話もあり、観ていると、生きとし生けるものへの愛着がちょっぴり増す。生きていることがなんだか楽しくなってくる。それが狂言の魅力。


狂言「川上」


盲目の男が、願いを叶えてくれるという「川上」の地蔵に参詣し、その甲斐あって視力を得る。 しかし、男の夢に現れた地蔵は視力と引き換えに「妻と離別せよ」という過酷なお告げを残していたのだった。 視力か、尽くしてくれた妻か、男は究極の選択を迫られる。和泉流のみに伝承されるこの演目は、笑いを本旨とする狂言においてはシリアスな異色作。夫婦愛と宿命を深く問う物語は、現代に通じるテーマをはらむ。


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老いる前に死にたいね


1964年のデビューから78年までの代表曲のライブパフォーマンスを中心に、プロモーションフィルムやインタビュー映像、さらに32歳で夭逝した伝説的ドラマー、キース・ムーンが亡くなる前の最後のパフォーマンスも収録した、ブリティッシュ・ロックの黄金期を牽引したバンド「ザ・フー」の全盛期をとらえた音楽ドキュメンタリー。完成から46年の時を経て、全曲歌詞字幕付きで日本初劇場公開。

1979年製作/110分/イギリス
原題または英題:The Kids Are Alright
配給:オンリー・ハーツ


あらすじ



ビートルズ、ローリング・ストーンズと共にブリティッシュ・ロックの黄金期を牽引し、ロックを革新し続けたスーパーバンド、ザ・フー。全盛期の来日がかなわなかった彼らの1964年から78年までの代表曲のライブパフォーマンスを中心とした、ロック・ドキュメンタリー映画史上の傑作。数多い歴史的シーンの中でも、78年5月にシェバートン・スタジオで本作のために撮影された、伝説的天才ドラマー、キース・ムーン最後の渾身のパフォーマンス(32歳で他界する3か月前、メンバー全員が死力を尽くした)は、見るものに無上の感動を呼び起こす。




解説


ロック・ドキュメンタリーの歴史的傑作が
ついに日本初劇場公開!


ビートルズ、ローリング・ストーンズと共にブリティッシュ・ロックの黄金期を牽引し、ロックを革新し続けたスーパーバンド、ザ・フー。彼らの1964年から1978年までの代表曲のライブパフォーマンスを中心に、プロモーションフィルム、インタビューなどを含む、ロック・ドキュメンタリー映画史上の傑作。数多い歴史的シーンの中でも、78年5月にシェバートン・スタジオで本作のために撮影された、伝説的天才ドラマー、キース・ムーン最後の渾身のパフォーマンス(32歳で他界する3か月前)は、見るものの心を震わせる、貴重な映像だ。監督ジェフ・スタインは、「直線的で年代順のドキュメンタリー」ではなく、「フィルムによるロックンロール復活集会」や「スリル満点のジェットコースター」のような作品を創り出そうと試みたという。映画はキース・ムーン死後の1979年、73年のアルバム「四重人格」を原作とした映画『さらば青春の光』と同時公開されたが日本では未公開。ザ・フーのレコード・デビュー60周年、そして、彼らのほぼすべての曲を作ったピート・タウンゼントが80歳を迎える2025年、完成から46年を経て、全曲歌詞字幕付きで日本初劇場公開。

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第78回 カンヌ国際映画祭(2025年)監督週間選出作品


第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」
日本人史上最年少選出!!


第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に日本人史上最年少、26歳で選出された団塚唯我監督の長編デビュー作は、再開発が進む東京の都市の中で、監督自らの家族の問題を元に描かれた母親の死と、残された父親と息子の関係性と互いの自立の物語。
主人公・蓮をNHK連続テレビ小説『ブギウギ』で俳優デビューを果たし注目を集めた黒崎煌代、父・初を日本映画界に欠かせない遠藤憲一、亡き母・由美子を俳優・モデルとして幅広く活躍する井川遥、姉・恵美を『ピアニストを待ちながら』の実力派・木竜麻生がそれぞれ演じた。

2025年製作/115分/日本
配給:シグロ


あらすじ



再開発が進む東京・渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働く青年、蓮。ある日、蓮は配達中に父と数年ぶりに再会する。姉・恵美にそのことを話すが、恵美は一見すると我関せずといった様子で黙々と自分の結婚の準備を進めている。母を失って以来、姉弟と父は疎遠になっていたのだ。悶々と日々を過ごしていた蓮だったが、彼はもう一度家族の距離を測り直そうとする。変わりゆく街並みを見つめながら、家族にとって、最後の一夜が始まる。




解説


世界から注目を浴びる
団塚唯我監督の長編デビュー作


今年5月、第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に日本人史上最年少、26歳の監督作品が選出された。オリジナル脚本・初長編作品でその快挙を成し遂げたのは、短編『遠くへいきたいわ』(ndjc2021)で注目を集めた団塚唯我監督。主人公の青年・蓮と、結婚を控え将来について悩む姉。そして母の喪失をきっかけに姉弟と疎遠になった、ランドスケープデザイナーの父。渋谷の街を舞台に、関係をふたたび見つめ直そうとする彼らを描く本作は、普遍的な家族の風景から、都市の再開発がもたらす影響までを繊細に描き出す。きわめて軽やかに、ただ、決して切実さは失わずに。観客に開かれた、新人監督の瑞々しい感性による新しいスタイルの日本映画が誕生した。

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第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)グランプリ 受賞


インド映画史上初の快挙!!


ままならない人生に葛藤しながらも自由に生きたいと願う女性たちの友情を、光に満ちた淡い映像美と幻想的な世界観で描き、第77回カンヌ国際映画祭(2024年)にてインド映画として初めてグランプリに輝いた作品。
監督を務めたのはムンバイ出身の新鋭パヤル・カパーリヤー。初長編ドキュメンタリー『何も知らない夜』は2021年カンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、ベスト・ドキュメンタリー賞であるゴールデンアイ賞を受賞。2023年には山形国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門でロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)受賞するなど、15の映画賞にノミネート、9つの賞を受賞している。『私たちが光と想うすべて』は初長編劇映画ながら、第77回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、世界から注目を集める映画監督の一人となった。

2024年製作/118分/PG12/フランス・インド・オランダ・ルクセンブルク合作
原題または英題:All We Imagine as Light
配給:セテラ・インターナショナル


あらすじ



インドのムンバイで看護師をしているプラバと、年下の同僚のアヌ。二人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、職場と自宅を往復するだけの真面目なプラバと、何事も楽しみたい陽気なアヌの間には少し心の距離があった。プラバは親が決めた相手と結婚したが、ドイツで仕事を見つけた夫から、もうずっと音沙汰がない。アヌには密かに付き合うイスラム教徒の恋人がいるが、お見合い結婚させようとする親に知られたら大反対されることはわかっていた。そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァティが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村へ帰ることになる。揺れる想いを抱えたプラバとアヌは、一人で生きていくというパルヴァティを村まで見送る旅に出る。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、二人はそれぞれの人生を変えようと決意させる、ある出来事に遭遇する──。




解説


映画の未来を照らす
新鋭パヤル・カパーリヤー監督初長編劇映画


第77回カンヌ国際映画祭でインド映画史上初のグランプリを受賞し話題となった、新鋭パヤル・カパーリヤー監督初長編劇映画。都会で生きる女性たちが、人生のままならない状況に対峙しながら、ありのままでいたいと願い支え合う姿に、国や文化を超えた共感が湧き上がる感動作。カパーリヤー監督と同世代で『バービー』旋風で全世界を席巻したグレタ・ガーウィグ監督を審査委員長に、日本から審査員として参加した是枝裕和監督も本作を絶賛。ゴールデン・グローブ賞など100以上の映画祭・映画賞にノミネートされ25 以上の賞を受賞、オバマ元⼤統領の2024年のベスト10に選ばれ、70か国以上での上映が決定するなど、世界中から⾼評価を獲得している。
光に満ちたやさしく淡い映像美、洗練されたサウンド、そして夢のように詩的で幻想的な世界観を紡ぎ出し、これまでのインド映画のイメージを一新、「ウォン・カーウァイを彷彿とさせる」と評判を呼んだ。 さらに、カパーリヤー監督は、2025年カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員にも大抜擢。シャーロット・ウェルズ監督(『aftersun/アフターサン』)、セリーヌ・ソン監督(『パスト ライブス/再会』)など、30 代の若手女性監督たちの作品が世界の映画祭で脚光を浴びる中、現在39歳のカパーリヤー監督もまた、世界中から新たな才能として熱い注目を集めている。


ままならない人生に揺れる女性たちの友情を描く
儚いけれど決して消えない光を放つ感動作


ムンバイの病院で働くプラバは既婚だが、夫は外国へ行ったきり音沙汰がない。同僚のアヌは密かにイスラム教徒の恋人がいるが、親からお見合い結婚を迫られている。プラバとアヌは、ルームメイトだけれど少し距離がある。真面目で年上のプラバを演じるのは、『Biriyaani(原題)』でケーララ州映画賞・主演⼥優賞を受賞、2024年度東京フィルメックスで話題を呼んだ『女の子は女の子』に出演したカニ・クスルティ。陽気なアヌには『Ariyippu(原題)』でロカルノ国際映画祭国際コンペティション部門主演女優賞にノミネートされたディヴィヤ・プラバ。病院の食堂で働き、住居を追われ故郷に帰るパルヴァティには、日本でもスマッシュヒットを記録した『花嫁はどこへ︖』のベテラン俳優チャヤ・カダム。生きる様を表現するかのようなリアルな演技が、観る者の心の芯を静かに深く揺さぶる。
世代や境遇、性格も異なる三人の女性の共通点は、ままならない人生に葛藤しながらも、自由に生きたいと願っていること。はじめは分かり合えなかった三人が、互いを思いやり支え合っていく。そこにあるのは声高な共闘ではなく、ただ相手の存在を“認める”という温かな視線。彼女たちの姿に、国境も人種も超えて、共感が広がる。世界中に光を届ける新たな傑作が、この夏、日本を照らし出す。

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第66回ベルリン国際映画祭(2016年) 正式出品作品


抵抗の種は、生活の中に


イギリスの作家ジョン・バージャーを敬愛し、1980年代から親交を深めてきたティルダ・スウィントンが、2009年にロンドンの実験的映像プロダクション「デレク・ジャーマン・ラボ」と共同で本作を企画。スウィントンと2人の子どもたち、バージャーを慕うアーティストたちが、フレンチ・アルプスの村カンシーに暮らすバージャーの元を訪ね、戦争の記憶、人間と動物、政治とアート、そして次世代への継承について対話を繰り広げる姿を、カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して描きだす。

2015年製作/90分/イギリス
原題または英題:The Seasons In Quincy: Four Portraits of John Berger
配給:BABELO


あらすじ



ジョン・バージャーとティルダ・スウィントンが彼の詩や絵を題材とし、父親の記憶と戦争、歴史、世代を超えた価値観の継承と更新など、率直に語りあう「聞き方」。『Why Look at Animals?』や『Into the Labour』に収められた彼の動物についての記述が、アルプスの高原に暮らす動物たちの姿とともに語られる「春」。彼が発する言葉をヒントに、政治におけるアートの役割について討論を繰り広げる「政治の歌」。親から子へと主題が移る、バージャーとスウィントンが互いの父について話した「聞き方」 への応答でもある「収穫」。カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して、戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった、バージャーが一貫して取り組んできたテーマを一つ一つすくい取り、次世代にバトンを繋いでいきます。




解説


稀代のストーリーテラーとの
“思考のレッスン”


英国の作家ジョン・バージャーは、1950年代末にデビューし、2017年に90歳でこの世を去るまで、美術批評、詩作、戯曲、小説といった多彩な分野で旺盛な表現活動を展開しました。1972年には小説「G.」でブッカー賞を受賞。また代表作『Ways of Seeing』(邦題『イメージ:視覚とメディア』)は、西洋美術の商業主義や女性の描かれ方を通して、西洋社会のものの見方のバイアスを批評し、今もなお世界中で版を重ねる象徴的な作品となりました。韓国では近年、著書の多くが翻訳されているほか、日本でも西欧の移民労働者を描いた『A Seventh Man』(邦題『第七の男』)を始め、2024年以降邦訳が立て続けに出版されています。


オスカー女優ティルダ・スウィントンが慕った
反骨の作家、その素顔と最後の日々


2007年に映画『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、今年1月には最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が日本公開された英国の女優ティルダ・スウィントンにとって、ジョン・バージャーは特別な存在であり続けてきました。1989年の映画『Play Me Something』(日本未公開)で共演を果たしたふたり。軍人の父を持ち、時を隔てて同じ日にロンドンで生まれたという事実が互いの結びつきを強め、長年にわたって親交を深めてきました。スウィントンが中心となり、ロンドンの実験的映像プロダクション、「デレク・ジャーマン・ラボ」と製作した本作は、彼女がバージャーの住むフレンチ・アルプスの村カンシーを訪ねる場面から始まります。カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して、戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった、バージャーが一貫して取り組んできたテーマを一つ一つすくい取り、次世代にバトンを繋いでいきます。“小さな声”、“声なき声” に耳をすませ、生涯を通じて “文化的抵抗”(Cultural Resistance)を止めなかった語り手、ジョン・バージャー。その鋭くも温かい世界へのまなざしが、スウィントンを始め、彼を慕う人々との対話を通じて立体的に浮かび上がります。それはまた、混沌とする現代社会にあって、バージャーが今に遺した置き手紙のようにも見えてきます。

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