2022年 第72回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(主演俳優賞 / 脚本賞)
ドイツ映画賞 作品賞〈銀賞〉 主演女優賞 助演男優賞受賞
アメリカ大統領を訴えるんだ
誰が?わたしが?
そうだ。君だ
2001 年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロのひと月後。ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民のクルナス一家の長男ムラートが、旅先のパキスタンで“タリバン”の嫌疑をかけられ、キューバのグアンタナモ湾にある米軍基地の収容所に収監されてしまう。母ラビエは息子を救うため奔走するが、警察も行政も動いてくれない。藁にもすがる思いで、電話帳で見つけた人権派弁護士ベルンハルトの元を訪れたラビエは、アドバイスを受けアメリカ合衆国最高裁判所でブッシュ大統領を相手に訴訟を起こすことになる……。
2022年製作/119分/G/ドイツ・フランス合作
原題:Rabiye Kurnaz gegen George W. Bush
配給:ザジフィルムズ
あらすじ
2001 年 10 月、アメリカ同時多発テロのひと月後。ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民のクルナス一家の母ラビエのもとに、19 歳の長男ムラートからパキスタンのカラチに行くという電話が入る。トルコから妻を呼び寄せる前にイスラム教の信仰を確かにしたいから、と。その後 5 日間も連絡を寄こさないムラートを心配したラビエは警察へ。しかし、警察はムラートの行動を怪しんでいるようで協力してくれそうにない。3 か月後、ラビエが帰宅すると家の前に報道陣が待ち構えていた。ムラートが刑務所にいると記者から聞かされ、動揺するラビエ。追い討ちをかけるように、“ブレーメンのタリバン”という見出しでムラートのことが新聞の一面で報じられる。そして翌月の 2002 年 2 月、ラビエは、検察官のシュトッカーにある事実を言い渡される。
「息子さんはキューバのグアンタナモ湾にあるアメリカ軍の収容所に移されました」
「何それ? なぜそんな地の果てに?」
コーラン講座のためにパキスタンを訪れたこと、持ち物、そしてムスリムの男性であることを理由に、ムラートはタリバンだと疑われているというのだ。5 月、ムラートから初めて手紙が届き喜ぶラビエ。その手紙を携え、電話帳で見つけた人権派弁護士ベルンハルト・ドッケの事務所を訪れる。急な訪問に困惑するベルンハルトだったが、手紙の送り元を見て表情が一変する。無事に協力を得られることになったが、そう簡単に事は進まない。ドイツの外務大臣はムラートがトルコ国籍であることを理由に難色を示し、トルコの法務大臣は直談判したにもかかわらず音沙汰無し。そんな中、ベルンハルトはラビエにあることを提案する。
「アメリカ合衆国最高裁判所で政府を訴える集団訴訟に加わろう」
ホワイトハウスに請願書を渡すため、ラビエはついにワシントン D.C.へ向かう――!
解説
ベルリン映画祭 銀熊賞(主演俳優賞/脚本賞)2冠!
実話から生まれた感動の物語。
監督は『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(18)のベテラン、アンドレアス・ドレーゼン。無実の罪で5年もの間グアンタナモに収監されたムラート・クルナス本人の著作の映画化を計画するも、あまりにも悲惨な内容に二の足を踏んでいた。そんな中で出会ったムラートの母ラビエの天真爛漫なキャラクターに魅せられ、作品の方向性が決定づけられ、シリアスなテーマにもかかわらずコメディタッチで軽妙な快作が誕生することになった。主演のラビエを見事に演じ切ったドイツの人気コメディアン メルテム・カプタンは、「エリン・ブロコビッチ風のずうずうしさを盛り込んだ好感の持てる主役」(DEADLINE)、「絶妙な間合いと温かさを役にもたらした真の秘密兵器メルテム・カプタン」 (The Hollywood Reporter)などと評され、ドイツ映画デビュー作にして初主演となった本作で、第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演俳優賞)受賞の快挙を成し遂げた。さらにベルリン国際映画祭では銀熊賞(脚本賞)の W 受賞も果たし、また、ドイツで最も権威のあるドイツ映画賞では作品賞<銀賞>、主演女優賞、助演男優賞の3部門で受賞した。
オカン版『エリン・ブロコビッチ』!
観る人すべてに力をくれる愛と勇気のエンパワーメント・ムービー!
キューバ グアンタナモ湾米軍基地収容キャンプを題材にした映画には、『グアンタナモ、僕達が見た真実』(06)、『モーリタニアン 黒塗りの記録』(21)等があるが、本作は収容所の描写なしに、収容者を救い出そうとする側から描いた異色作。母ラビエと弁護士ベルンハルトのコンビは、『エリン・ブロコビッチ』(00)のエリンと弁護士、『あなたを抱きしめる日まで』(13)のフィロミナとジャーナリスト、『パリタクシー』(22)のマダムとタクシー運転手を彷彿とさせ、一種のバディ・ムービーとも言え、二人が立場を超えて理解し合い、協力していく姿は、観るものに爽やかな感動を与えるに違いない。
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