上映予定の映画



第39回インディペンデント・スピリット賞(2023年)ジョン・カサヴェテス賞受賞


フォーチュンクッキーが運んでくる幸せの予感…?
甘くてほろ苦い、ジム・ジャームッシュにインスパイアされたインディーズ映画


フォーチュンクッキーをきっかけに、孤独な女性が新たな一歩を踏み出す姿をオフビートなユーモアを交えて描いた本作は、第39回サンダンス映画祭でプレミア上映され、第39回インディペンデント・スピリット賞ではジョン・カサヴェテス賞を受賞。心地よいノスタルジーを想起させる、モノクロームで綴られた映像は、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)や『ダウン・バイ・ロー』(86)など、ジム・ジャームッシュ監督の初期作を彷彿とさせながら、「アメリカのインディペンデント映画を刷新することに成功した」(Los AngelesTimes)と話題を呼び、映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家たちから98%という高い支持を得た。

2023年製作/91分/G/アメリカ
原題または英題:Fremont
配給:ミモザフィルムズ


あらすじ



カリフォルニア州フリーモントにあるフォーチュンクッキー工場で働くドニヤは、アパートと工場を往復する単調な生活を送っている。母国アフガニスタンの米軍基地で通訳として働いていた彼女は、基地での経験から、慢性的な不眠症に悩まされている。ある日、クッキーのメッセージを書く仕事を任されたドニヤは、新たな出会いを求めて、その中の一つに自分の電話番号を書いたものをこっそり紛れ込ませる。すると間もなく1人の男性から、会いたいとメッセージが届き…。




解説


映画初出演アナイタ・ワリ・ザダ × 大人気俳優ジェレミー・アレン・ホワイト
チャーミングなガール・ミーツ・ボーイの物語


監督はイラン出身で、イギリス、ロンドンで育ったババク・ジャラリ。2016年に『Radio Dreams(原題)』がロッテルダム国際映画祭など数々の映画祭で高く評価され、続く『Land(原題)』(18)が第68回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に出品されるなど、着実にキャリアを築いてきた。主演は、本作が映画デビュー作となるアナイタ・ワリ・ザダ。母国アフガニスタンでテレビ局の司会者やジャーナリストとして活躍していたが、主人公ドニヤ同様、タリバンが復権した2021年8月にアメリカへと逃れてきた。ドニヤのキャラクターに共感を覚えたという彼女は、アメリカに来てわずか5ヵ月で、演技も未経験だったにも関わらず、熱意で見事公募の中から選ばれた。彼女自身が歩んできた道程と重ねながら、ババク監督は、ドニヤの抱える悲しみや迷い、そして「幸せになりたい」という誰もが抱く普遍的な願いを共感のまなざしであたたかく描き出す。ドニヤがブラインドデートの道中で予期せず出会う、自動車整備士のダニエル役を演じたのは、今最もハリウッドで注目される俳優の一人、ジェレミー・アレン・ホワイト。大人気ドラマシリーズ『一流シェフのファミリーレストラン(原題:The Bear)』(22-)で主人公カーミー役を演じ大ブレイク。2025年のゴールデングローブ賞では、同作で3年連続となるテレビ部門の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した。本作へは、ジェレミーが10代のときに出演した『アフタースクール』(08)のアントニオ・カンポス監督と、ババク監督が親しい友人であったことから出演が実現。脚本を気に入ったジェレミーは、短い出演シーンながらも強いインパクトを残し、チャーミングなガール・ミーツ・ボーイの物語へと映画を転がしていく。さらにセラピストのアンソニー役には、マーベル・スタジオ映画『アントマン』(15)『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(23)などで知られる俳優、コメディアンのグレッグ・ターキントンが配役。時折光るユーモアのセンスで確かな存在感を放っている。またラッパーで『ホワイト・ボイス』(18)の監督としても知られるブーツ・ライリーもカメオ出演。個性豊かなキャストが脇を固めた。


多様な文化と歴史が混ざり合う、
アメリカ西海岸の都市フリーモントを舞台に
未来へのささやかな希望をくるんだ一作


舞台となるフリーモントの街並みも魅力的だ。サンフランシスコやロサンゼルスのような開放的な西海岸のイメージとは異なり、多くのテクノロジー企業が拠点を置くベッドタウンで、アフガニスタン系やアジア系、特に中国、インド、フィリピン系の多様な民族が暮らしている。またチャールズ・チャップリンの作品で知られる映画スタジオ、エッサネイ社がかつてスタジオを構え、『チャップリンの失恋』(1915)をはじめ数多くのチャップリン作品を撮影、ハリウッド史において重要な場所でもある。本作ではドニヤの足取りを追いかけながら、そんな多様な文化と歴史が混ざり合うフリーモントの姿を垣間見ることができる。ほんの“一粒”の勇気が「未知の世界へ」と導いてくれるかもしれない。哀愁を帯びたヴァシュティ・バニヤンの名曲「Diamond Day」のハーモニーにのせて、そんな爽やかな希望の風が吹き抜ける一作。

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第66回ベルリン国際映画祭(2016年) 正式出品作品


抵抗の種は、生活の中に


イギリスの作家ジョン・バージャーを敬愛し、1980年代から親交を深めてきたティルダ・スウィントンが、2009年にロンドンの実験的映像プロダクション「デレク・ジャーマン・ラボ」と共同で本作を企画。スウィントンと2人の子どもたち、バージャーを慕うアーティストたちが、フレンチ・アルプスの村カンシーに暮らすバージャーの元を訪ね、戦争の記憶、人間と動物、政治とアート、そして次世代への継承について対話を繰り広げる姿を、カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して描きだす。

2015年製作/90分/イギリス
原題または英題:The Seasons In Quincy: Four Portraits of John Berger
配給:BABELO


あらすじ



ジョン・バージャーとティルダ・スウィントンが彼の詩や絵を題材とし、父親の記憶と戦争、歴史、世代を超えた価値観の継承と更新など、率直に語りあう「聞き方」。『Why Look at Animals?』や『Into the Labour』に収められた彼の動物についての記述が、アルプスの高原に暮らす動物たちの姿とともに語られる「春」。彼が発する言葉をヒントに、政治におけるアートの役割について討論を繰り広げる「政治の歌」。親から子へと主題が移る、バージャーとスウィントンが互いの父について話した「聞き方」 への応答でもある「収穫」。カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して、戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった、バージャーが一貫して取り組んできたテーマを一つ一つすくい取り、次世代にバトンを繋いでいきます。




解説


稀代のストーリーテラーとの
“思考のレッスン”


英国の作家ジョン・バージャーは、1950年代末にデビューし、2017年に90歳でこの世を去るまで、美術批評、詩作、戯曲、小説といった多彩な分野で旺盛な表現活動を展開しました。1972年には小説「G.」でブッカー賞を受賞。また代表作『Ways of Seeing』(邦題『イメージ:視覚とメディア』)は、西洋美術の商業主義や女性の描かれ方を通して、西洋社会のものの見方のバイアスを批評し、今もなお世界中で版を重ねる象徴的な作品となりました。韓国では近年、著書の多くが翻訳されているほか、日本でも西欧の移民労働者を描いた『A Seventh Man』(邦題『第七の男』)を始め、2024年以降邦訳が立て続けに出版されています。


オスカー女優ティルダ・スウィントンが慕った
反骨の作家、その素顔と最後の日々


2007年に映画『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、今年1月には最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が日本公開された英国の女優ティルダ・スウィントンにとって、ジョン・バージャーは特別な存在であり続けてきました。1989年の映画『Play Me Something』(日本未公開)で共演を果たしたふたり。軍人の父を持ち、時を隔てて同じ日にロンドンで生まれたという事実が互いの結びつきを強め、長年にわたって親交を深めてきました。スウィントンが中心となり、ロンドンの実験的映像プロダクション、「デレク・ジャーマン・ラボ」と製作した本作は、彼女がバージャーの住むフレンチ・アルプスの村カンシーを訪ねる場面から始まります。カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して、戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった、バージャーが一貫して取り組んできたテーマを一つ一つすくい取り、次世代にバトンを繋いでいきます。“小さな声”、“声なき声” に耳をすませ、生涯を通じて “文化的抵抗”(Cultural Resistance)を止めなかった語り手、ジョン・バージャー。その鋭くも温かい世界へのまなざしが、スウィントンを始め、彼を慕う人々との対話を通じて立体的に浮かび上がります。それはまた、混沌とする現代社会にあって、バージャーが今に遺した置き手紙のようにも見えてきます。

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第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)グランプリ受賞


インド映画史上初の快挙!!


ままならない人生に葛藤しながらも自由に生きたいと願う女性たちの友情を、光に満ちた淡い映像美と幻想的な世界観で描き、第77回カンヌ国際映画祭(2024年)にてインド映画として初めてグランプリに輝いた作品。
監督を務めたのはムンバイ出身の新鋭パヤル・カパーリヤー。初長編ドキュメンタリー『何も知らない夜』は2021年カンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、ベスト・ドキュメンタリー賞であるゴールデンアイ賞を受賞。2023年には山形国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門でロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)受賞するなど、15の映画賞にノミネート、9つの賞を受賞している。『私たちが光と想うすべて』は初長編劇映画ながら、第77回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、世界から注目を集める映画監督の一人となった。

2024年製作/118分/PG12/フランス・インド・オランダ・ルクセンブルク合作
原題または英題:All We Imagine as Light
配給:セテラ・インターナショナル


あらすじ



インドのムンバイで看護師をしているプラバと、年下の同僚のアヌ。二人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、職場と自宅を往復するだけの真面目なプラバと、何事も楽しみたい陽気なアヌの間には少し心の距離があった。プラバは親が決めた相手と結婚したが、ドイツで仕事を見つけた夫から、もうずっと音沙汰がない。アヌには密かに付き合うイスラム教徒の恋人がいるが、お見合い結婚させようとする親に知られたら大反対されることはわかっていた。そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァティが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村へ帰ることになる。揺れる想いを抱えたプラバとアヌは、一人で生きていくというパルヴァティを村まで見送る旅に出る。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、二人はそれぞれの人生を変えようと決意させる、ある出来事に遭遇する──。




解説


映画の未来を照らす
新鋭パヤル・カパーリヤー監督初長編劇映画


第77回カンヌ国際映画祭でインド映画史上初のグランプリを受賞し話題となった、新鋭パヤル・カパーリヤー監督初長編劇映画。都会で生きる女性たちが、人生のままならない状況に対峙しながら、ありのままでいたいと願い支え合う姿に、国や文化を超えた共感が湧き上がる感動作。カパーリヤー監督と同世代で『バービー』旋風で全世界を席巻したグレタ・ガーウィグ監督を審査委員長に、日本から審査員として参加した是枝裕和監督も本作を絶賛。ゴールデン・グローブ賞など100以上の映画祭・映画賞にノミネートされ25 以上の賞を受賞、オバマ元⼤統領の2024年のベスト10に選ばれ、70か国以上での上映が決定するなど、世界中から⾼評価を獲得している。
光に満ちたやさしく淡い映像美、洗練されたサウンド、そして夢のように詩的で幻想的な世界観を紡ぎ出し、これまでのインド映画のイメージを一新、「ウォン・カーウァイを彷彿とさせる」と評判を呼んだ。 さらに、カパーリヤー監督は、2025年カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員にも大抜擢。シャーロット・ウェルズ監督(『aftersun/アフターサン』)、セリーヌ・ソン監督(『パスト ライブス/再会』)など、30 代の若手女性監督たちの作品が世界の映画祭で脚光を浴びる中、現在39歳のカパーリヤー監督もまた、世界中から新たな才能として熱い注目を集めている。


ままならない人生に揺れる女性たちの友情を描く
儚いけれど決して消えない光を放つ感動作


ムンバイの病院で働くプラバは既婚だが、夫は外国へ行ったきり音沙汰がない。同僚のアヌは密かにイスラム教徒の恋人がいるが、親からお見合い結婚を迫られている。プラバとアヌは、ルームメイトだけれど少し距離がある。真面目で年上のプラバを演じるのは、『Biriyaani(原題)』でケーララ州映画賞・主演⼥優賞を受賞、2024年度東京フィルメックスで話題を呼んだ『女の子は女の子』に出演したカニ・クスルティ。陽気なアヌには『Ariyippu(原題)』でロカルノ国際映画祭国際コンペティション部門主演女優賞にノミネートされたディヴィヤ・プラバ。病院の食堂で働き、住居を追われ故郷に帰るパルヴァティには、日本でもスマッシュヒットを記録した『花嫁はどこへ︖』のベテラン俳優チャヤ・カダム。生きる様を表現するかのようなリアルな演技が、観る者の心の芯を静かに深く揺さぶる。
世代や境遇、性格も異なる三人の女性の共通点は、ままならない人生に葛藤しながらも、自由に生きたいと願っていること。はじめは分かり合えなかった三人が、互いを思いやり支え合っていく。そこにあるのは声高な共闘ではなく、ただ相手の存在を“認める”という温かな視線。彼女たちの姿に、国境も人種も超えて、共感が広がる。世界中に光を届ける新たな傑作が、この夏、日本を照らし出す。

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第78回 カンヌ国際映画祭(2025年)監督週間選出作品


第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」
日本人史上最年少選出!!


第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に日本人史上最年少、26歳で選出された団塚唯我監督の長編デビュー作は、再開発が進む東京の都市の中で、監督自らの家族の問題を元に描かれた母親の死と、残された父親と息子の関係性と互いの自立の物語。
主人公・蓮をNHK連続テレビ小説『ブギウギ』で俳優デビューを果たし注目を集めた黒崎煌代、父・初を日本映画界に欠かせない遠藤憲一、亡き母・由美子を俳優・モデルとして幅広く活躍する井川遥、姉・恵美を『ピアニストを待ちながら』の実力派・木竜麻生がそれぞれ演じた。

2025年製作/115分/日本
配給:シグロ


あらすじ



再開発が進む東京・渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働く青年、蓮。ある日、蓮は配達中に父と数年ぶりに再会する。姉・恵美にそのことを話すが、恵美は一見すると我関せずといった様子で黙々と自分の結婚の準備を進めている。母を失って以来、姉弟と父は疎遠になっていたのだ。悶々と日々を過ごしていた蓮だったが、彼はもう一度家族の距離を測り直そうとする。変わりゆく街並みを見つめながら、家族にとって、最後の一夜が始まる。




解説


世界から注目を浴びる
団塚唯我監督の長編デビュー作


今年5月、第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に日本人史上最年少、26歳の監督作品が選出された。オリジナル脚本・初長編作品でその快挙を成し遂げたのは、短編『遠くへいきたいわ』(ndjc2021)で注目を集めた団塚唯我監督。主人公の青年・蓮と、結婚を控え将来について悩む姉。そして母の喪失をきっかけに姉弟と疎遠になった、ランドスケープデザイナーの父。渋谷の街を舞台に、関係をふたたび見つめ直そうとする彼らを描く本作は、普遍的な家族の風景から、都市の再開発がもたらす影響までを繊細に描き出す。きわめて軽やかに、ただ、決して切実さは失わずに。観客に開かれた、新人監督の瑞々しい感性による新しいスタイルの日本映画が誕生した。

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