第76回 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品(2023年)
早熟の異才モレッティ監督 5 0 年のキャリアの集大成?
23歳でデビューの後、若くしてその才能を認められ40歳を迎える頃にはカンヌ、ヴェネチア、ベルリンの3大映画祭を制覇し、モレッティアーノと言われる熱狂的なファンを持つモレッティ監督。マチュー・アマルリックは10代の頃からモレッティの映画の世界に魅了されていたと語り、彼の映画から生まれたいくつかの名言は作品を知らないZ世代のミームにさえなっている。スクリーンの前で自分の人生を演じ同時代人の圧倒的な支持を得てきた彼は常に前向きな現代社会の観察者だった。知的で辛辣だが楽観的な未来を夢見ている。老境に差しかかった映画監督が激しい時代の変化に適応する難しさを面白おかしく描いたコメディが本作だ。監督はこの映画が彼のキャリアの第一段階の集大成の作品だという。
2023年製作/96分/G/イタリア・フランス合作
原題または英題:Il sol dell'avvenire
配給:チャイルド・フィルム
あらすじ
完璧のようにみえていた映画監督ジョヴァンニの人生。順調なキャリア、傍にはプロデューサーの妻、溢れんばかりの新作のアイディア。でも、そう思っていたのはジョヴァンニだけだった!チネチッタ撮影所で新作の撮影が始まると、畳みかけるようにジョヴァンニを災難が襲う。女優は大嫌いなミュールを履いてきた上に演出に口を出し、プロデューサーは詐欺師だったと判明、妻には突然別れを告げられる!映画は完成するのか?家族の愛をとり戻せるのか?変化の激しい時代に、ちょっと取り残されて、戸惑うジョヴァンニが見つけた人生で本当に大切なこととは?
解説
映画についての映画
モレッティには『ナンニ・モレッティのエイプリル』『母よ、』など映画の中で映画を撮る作品が何本もある。監督は多くの場合が彼の分身で、時代ごとにモレッティが感じる社会への違和感を表現してきた。本作で主人公ジョヴァンニが撮影しているのは1950年代を舞台にした政治がテーマ(と本人は思っている)映画。さらに脚本家たちとアメリカの作家ジョン・チーバーの短編小説「泳ぐ人」の脚本を執筆中。頭の中では映画館で出会った若いカップルの音楽が中心のラブストーリーが進行中だ。モレッティの大好きなフェリーニの『甘い生活』(本編にも登場する)と『8 2/1』。モレッティの偉大な支援者タヴィアーニ兄弟、キェシロフスキからスコセッシまで映画の力を信じるモレッティの監督たちと映画への敬意と愛に溢れた作品だ。
数々の名作が生まれた場所チネチッタ撮影所
撮影が行われたのは90年余の歴史を持つヨーロッパ最大の撮影スタジオで、フェデリコ・フェリーニ『アマルコルド』『青春群像』、ウィリアム・ワイラー『ベン・ハー』、ルキノ・ヴィスコンティの『ベリッシマ』、ピエル・パオロ・パゾリーニ『ソドムの市』、マーティン・スコセッシ『ギャング・オブ・ニューヨーク』やフランシス・フォード・コッポラ『ゴッドファーザー』、最近ではルカ・グァダニーノ『Queer』など数々の映画の撮影が行われた。夢の工場とも呼ばれ約3,000本の映画がこのスタジオで撮影され、そのうち90本がアカデミー賞にノミネートされ、51本が受賞している。日本映画の『テルマエ・ロマエ』などの撮影も行われた。
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